今ここに

百年たっても、言葉は残る

映像も残るはず

ただし肉体は残らない

 

千年たっても、ある言葉は残る

映像も残るかもしれない

墓はすでに朽ち果てているだろう

 

一万年たって、残る言葉はあるか

原発は残っているか

まだ戦争をしているか

宇宙に住むようになったか

まだ人類は文明を持っているか

 

今はもういない祖先と

まだ見ぬ子孫へ

 

私は今ここにいる

二千十七年を生きている

 

本音

あれはもう悪意のあるつぶやきだったのか
心の声を幻聴として聴いたのかはわからない
どちらにしても相手は調子づいてしゃべっていた
悪意も親切心も感じながら傷ついていた
心をオブラートに包まずのやり取り
傷つかないふりをして
そのくせ臆病になり人を遠ざけることの繰り返し
本音を言わず発声することの味気なさ
ただ曖昧に笑うだけの日々
礼儀に救われることもあるが
生きている実感は薄い

富士山

遠くから見ているだけの富士山。
まるで月のように存在感を発揮する。
地上とはいえそこは別世界。
平地にいてどこまでも遠いそれを眺める不思議。
まだ登頂を果たさず。
七月になりさすがに雪は減った。

秘密

もしも願いが叶うなら

何を望むのだろう

 

終わってしまった過去を

どうにかしたいと思っても

きりがない

 

成し遂げることができなかった

多くの夢

夢破れても

夢と現実が程よく

覚めた眼で見渡せる

ちょうど今なら

叶えたい願望を口に出すくらいの

贅沢はいいのかな

 

口に出すと幻となりそうなので

やっぱり秘密

 

自分に還る

無理したり

浮ついたり

粋がったり

心にないこと言ったり

どうしようもなく疲れる

 

どうにかして自分に還る

 

落ち着く場所

心の中を覗ける場所

静かな場所

心をごまかす必要はなく

ただ自分と向き合っている

深海魚

多くの嘘を見抜いてしまう眼。

 

闇を見すぎるのが怖くて

心に蓋をする内に

何が正しいこと

何が待ち望んでいること

何がやるべきことかを

見失ってしまう。

 

いつも心は平明であるとは限らない。

歪で

凸凹で

明るさを避け

時がただ過ぎるのを待っている。

 

 

感覚と経験

子供の頃味わった

数多くの新鮮な感覚。

その記憶だけは

しっかり残っているのに

その感覚を味わうことは

もはやない。

たった一度だけの

あるいは

限られた時間だけの経験。

 

置いてきぼりに

された気になる。

どうやったって

そこには戻れないから。

 

過去

楽しかった過去を思い出す

辛かった過去を思い出す

客観的事実なんてものは無く

それぞれの出来事が断片として浮かび上がる

全ては終わってしまったこと

過去は変えられない

確かにこれだと取り出すこともできない

今の自分は過去の道のりの果てにあると

肯定できれば幸いだ

諦めと悔恨と無くした痛みと多くの感情

それすらも徐々に形を無くしていく