螺旋

時間が経てば前に進める

すべてが過ぎれば過去だけになり

やがては記憶さえ無くなる

進む方向が間違っていたというなら

一体どれだけ前に戻れば

元の曲がり角に戻れるのか

行き着く先は破滅の道だと

知っていたのではないか

ただ今は生き延びていることだけが

信じられるような

それだって本当は

大きな傲慢かもしれないのに

モノクロ

騒がしい世の中から色を取りあげ
モノクロになりました。
騒がしい世の中から映像を取りあげ
音だけになりました。
騒がしい世の中から音を取りあげ
世界は無音になりました。
私は声を発することができなくなり
世界は透明になりました。
いつの日か世界は
色を
音を
そしてわたしは声を
取り戻すことが
できるでしょうか?

ラジオ

パソコンでラジオを聴いていた。

外国の歌手の曲が流れた。日本人の姓にもある名前。

かつての職場で隣の女性がこの姓だった。

私はここで働き出したものの職場のあまりの扱いに憤りすぐ退職。

どうひどかったかは今は書かない。

その決断は誤っていたとは思わない。

経歴書からも抹殺した。

彼女から言われた助言はまだ覚えている。

十年以上前のこと。

ただあの頃と比べるとずっと気が長くなった。

 

 

オリオン座

仕事帰り

暗闇の中から

夜空を見上げると

月の近くに

オリオン座

この星座を知ったのは

数年前

知らなくても不便ではないが

なぜ知らなかったのかが

不思議に思えるほど

見分けが付きやすい

砂時計のようだから

はるか遠く

失われた感覚

もはや取り戻せない感情

記憶の中にだけある

あれらは本当にこの身に

起こったことなのか

何もかもが幻でしか

無かったような

 

取り戻したい

しかし

過ぎ去った時代は

決してここには

どこにもない

 

どうしようもなく

はるかに遠い

いつの間にか

しかし本当は

それに気づいていた

 

ある感情

どうにもならない
痛みを
怒りを
惨めさを
無感覚に
押し込めても
それはいつか
出口を求めて
溢れだす

混乱した
感情を整理しようにも
狡さと
弱さと
諦めで
確かさを得る
ことができないままだ