現実

もっと堅牢であると 思っていた現実は どこまで行っても 過渡期とでもいうべきもの 儚く流動し とどまることはない つなぎとめるものなどなく 流れていくまま だからこそ 日々もがいている 痕跡を残すために

波に呑み込まれてはいけない 気づいたということはまだ間に合う 陰鬱な曇り空なのに だからこそ 思いが及んだ

沈黙

沈黙は ただ黙っているだけではなかった 待っていた ただ待っているだけのようでいて わずかにごくわずかに 動いてもいた 私は年老いた その時は来たのだろうか

霧が流れる 生き物のように 雨が降る 生き物のように 光が雲の間から差す 生き物のように 生き物の私はただそれを 黙って見ていた

赤子

無垢な赤子は 手を伸ばし 笑いかけていた その目は 世界を 捉えようとしていた

孤独

それは貴重なもの 孤独を恐れてはいけない (なかなかひとりにはなれないからね) 思考を深めるには 世界に自分だけが頼り (借り物の思考にいつの間にか侵されている) たが孤独に溺れてはいけない 頑なな心は世界を閉ざす (自分対世界じゃあ叶わない)

残暑

いつまで暑いのだと悲鳴を上げながらもちょうどいい気候など 数えるほどで暑いがすぎれば 今度は寒いに文句をつける 夏の暑さもそれほど 悪いものではなかったと 体の奥に刻みつける 年輪のように

夏から秋へ

どんよりとした空 秋雨は夏草を殺す 夏野菜を殺す雨が上がった頃には 季節はすっかり 入れ替わっている

酔わない 酔えない

酔ってしまうともう一人の自分が見ている 酔えない 熱狂の中にいても醒めて立っている(つもり) アルコールに頼って酔いたくなるほど ストレスがない、幸いに そして惰性の ネットサーフィン、ネットショッピング なにかずれている

帰京

飛行機は故郷を遠ざかり 東京へ帰って行く。 東に向かう飛行機に 後ろから西日が当たる。草に埋もれない 樹木もまばらな アスファルトジャングル。食べ過ぎに注意して 昼食はラーメン一杯、 腹減った。

十六

十六歳の少年が 四十年経ってここにいる 何者でもなかった もはやそれでいい

繰り返し

失敗というなら どこまでさかのぼればいいのか残念ながら どこまでさかのぼっても 愚かさから逃れられず あれもこれも 自分は自分でしかなかったただ可能性を信じ 未来を望むも 足がすくみ 迷い続ける年老いて 流れた時間は 無情にも 淡々と おまえはおまえ…

曼珠沙華咲き ススキの穂も開く あれだけ強烈だった 日射しが弱弱しく あれだけカラカラだった 空もしょっちゅう雨がぱらつく 収穫の秋だというのに 果樹園も畑も持たない我は 何も収穫するものはない でもなお言うまでもなく 天の恵みは雨と日照 多くの果実…

永遠というものに 手を差し伸べて それはどうにも ならないことを 知った今は 流されていくまま 刹那を積み上げて 残されたものは 全て幻影 時と共に 形は崩れ 無関係となり 去りゆくものになる

まるで空には 絵に描いたような雲が 浮かんでいるんだけど 現実って何だろうと 思わざるを得ない 夢でもないのに 夢を見ている気分だ 酔ってもないのに 酔っている気分だ

長いトンネル

長いトンネルは いつかは通り過ぎるのだろう 自分が自分のことを 信じられなくなって でも長いトンネルは いつかは通り過ぎる日が 来ることだけは 確信を持ってて それだけを頼りに 歩いている

これ以上

詰め込みすぎて もうこれ以上食べれません これ以上見れません これ以上歩けません もうこれ以上 これ以上

王様は裸だ

梅雨明けて 豪雨 酷暑 台風 異常気象のオンパレード 余りに多くの不穏な気候人間界も 従来の常識を疑うような 事件が相次ぐ 冷笑的態度は 終わりにして 旗幟を鮮明にしたい 与えられるだけでは 済まされない 歴史のまっただ中に 立たされている 黙っているだ…

風景

朝の通勤路 雑草は繁茂し 盛り返した夏の じっとりとした風に揺れる 電車に遅れないように いつもの早歩き 長い階段を上り 駅舎は高架の上 淀んだ空気の中 心臓はドキドキ 夏バテというのか 夏の疲れはピーク 帰り道 定時に帰っても 日に日に日暮れは早まる …

生きている

あわてるな。 きみが生きている というだけで それは 過去から 連綿と 続いた 生命の リレーの 証。 それを幸運と 呼ばず 何と呼ぼう。

暑い夏の昼下がり

言いたいことあったっけ 食べたいものあったっけ 歌いたいことあったっけ 行きたいところあったっけ 買いたいものあったっけ 外出から帰り 汗だくとなり 危うく熱中症 いろんなことは思考停止 この夏を乗り切ることだけを 生き延びることだけを 考えていた …

転々

次々と捨ててきた 捨てたつもりで 捨てられていたのでは 無かったか あの土地も あの場所も 居場所はどこにある どこでも無いどこかを 探し続けて もはや行く場所なんか無い

悠然と そびえ立つ山々を 見渡した 遠い夏の日々あの日には 戻れず 深い断裂を 思う失ったものは 時間なのか 心なのか遠い 遠い こんなにも

川は今日も流れる この流れはいつか降った雨 満々とした急流は通り過ぎた台風 何も言わず海を目指す 私は川に問いかける言葉を持たず 川の言葉を探ろうとしていた 黙って川辺を今日もまた歩いた

今を見てても 心はすでにその先の 滅びを見ている 遠いところを見たからといって 今この道も歩いていかねばならぬのだ 今そのものを生き尽くす それが難しい 心は今を見 過去を見 未来を見ている

それ

足りない 足りない 埋め合わそうにも それはひどく 手が届かないどころか 遠いところにある いつまで経っても それはひどく遠いどころか ますます遠ざかる もはやそのことが 安心な気さえしている 私はそれを静かな場所で 思っていた

信号

渡る前に信号が点滅 待つのか 慌てて渡るのか 気まぐれに ある時は走り ある時は悠然と見送る 心境の違いがよくわからない 慌てて渡っても得はない ただ待ちぼうけを嫌っているだけだ どこまで行っても この体からは逃げられない ならばどこにいても 何をし…

うだるような暑さだ こんな日は何をしてもダメだ ただ生き延びることを願った気楽に 気楽に 頑張らない 頑張らない頑張ろうと思ったとしたら 正気を失っている熱中症になりかけた時の 気持ち悪さを思いだした 夜にも暑さは続いてる この熱を冬に分けたい 本…

生きろ

自分の人生を生きろ。 闘え。 疲れたらゆっくり休め。 辛い時は泣け。 なるべく人に優しい声をかけろ。 不正、差別に同調するな。 無人の荒野を歩むことを怖れるな。 負けを認める勇気を持て。 よく人の声に耳を傾けろ。 人を羨むな。 よく考えろ。生きろ。 …

僕と君

ぬるい風が吹いている 今日は雨でも 日照りでも無かった 蒸し暑さはエアコンの 冷気で打ち消された 僕は君でなく 君は僕でない お互いに持たないものを 羨んでも仕方がない 自分の持つ物のありがたさを わかっているだろうか きっとわからないだろう わかり…