初老の男
こっち側あっち側と綱引きをする。
遠く感じられたあっち側が気がつけば親しいものになっていた。
足取り重くよろける。
顔に貼りついた疲れは取れない。
何歳まで生きるつもりだ。
自分で思っているほど若くないぞ。
いやそんなことは十分わかっている。
若いという事だけが取り柄だった頃もとうに過ぎ
どんどん死に近くなる老いが疎ましくなり
気がつけば引き返しようもないところまで来ている。
何歳でも、若いということは相対的でしかなく
年上の人から若いと言われてももう十分歳を取ったよと
言いたくなるが
できないことが運動不足や経験不足でなく
徹底的に加齢によるものと思い知らされ打ちのめされる。
もう手遅れなのか。
ふらつきながら夕暮れに走り出すのは見苦しいぞ。
なぜ皆苦しそうに走っているのか。
初老の男は不穏さを胸の内に秘めながら歩いている。