午後二時のまどろみ

詩

老いた猫のような

午後のまどろみ

平和そうな猫たちも

縄張り争いで

決死の闘いがあることを

知っている

飼い猫は闘いに敗れ

失血死してしまった

平和そうな午後

少しづつ崩れ

水面下で

どれほどの血が流れ

どれほどの冷酷

無関心に

世間は

覆い尽くされていることか

 

雨上がり

湿気混じりの風

蝉が生命の限りを尽くし鳴く

午後二時のまどろみ

 

音

詩

まどろみから
半覚醒の状態で
一階に足音を聞く
家族の誰かが
夜更かししたかと
階下に降りてみれば
誰もいない
隣家の音か
耳が良すぎるのか
小人が踊っていたのか
霊が通りすぎたのか
本当のことはわからない

都会暮らし

詩

都会暮らしに疲れ

日々の息抜きは

通勤帰りの

夜道の歩き

 

辛うじて

空を見上げて

息をついている

 

背伸びばかりは

していられない

 

シンプルに

生きたい

 

要らないものを

欲しがらないように

 

大事なものを

大事にし

見過ごさないように

心を殺さずに生きていけたらいいのに

詩

いつの間にか消えてしまった夢

 

鈍感さに埋もれる関係を嫌い

一人ぼっちになることを

当たり前に思い

そのくせ孤独を持て余している

 

人と係わらぬことにより

独りよがりになることを恐れている

 

都会の喧騒を嫌い

静寂を愛す

ただそれだけなのに

のんびりと寛ぐことができない

 

 

何が何だかわからぬうちに

もはや夕暮れ

何も成し遂げ得ぬことを

恐れている

 

闇に走り出したとて

何になるというのか

できるのは

ただ深い息をすることだけ

今ここに

詩

百年たっても、言葉は残る

映像も残るはず

ただし肉体は残らない

 

千年たっても、ある言葉は残る

映像も残るかもしれない

墓はすでに朽ち果てているだろう

 

一万年たって、残る言葉はあるか

原発は残っているか

まだ戦争をしているか

宇宙に住むようになったか

まだ人類は文明を持っているか

 

今はもういない祖先と

まだ見ぬ子孫へ

 

私は今ここにいる

二千十七年を生きている