2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

陽だまり

春が来て 冷たい氷が 溶けるように 冷え切った心が 陽だまりで 溶けていくような空

無色透明

ただ通り過ぎるだけの関係で 名前も顔も声も 忘れる前におぼろげで しがらみの無さとは 相手にとっても 無色透明

出来事

あの年には あの出来事があって どういう気持ちだったか 思い出せなくても 困りはしないが 大事な物を亡くした気になる

音の切れ間に 屋外の 雨の音を知る

夕暮れ

夕方になって駆け出しても どこにもたどり着かないんだよ 本気で目的地に向かうなら 早朝から出発しなければ 無為に時間を潰し 残酷にも夕暮れに気づいて 途方に暮れる さてここはどこなのか

歩く

朝の道 誰も彼も 倍速のように 歩いて 自分もまた

日々

冬空のもと歩いていく 希望は有るのか無いのか 雨が降らないだけましなのか 退屈だけど悲惨でもない ただ日々をやり過ごす

青いリンゴ

青いリンゴを買ったよ 赤くなくても甘くて酸っぱい

詩と死

感じたことを書けば詩になる 書き留めなければ煙のように消えていく どれだけの形にならなかった言葉があっただろう 墓石に刻まれた文字のように時代を越えて残るのか 残したい言葉はあるか

記憶

記憶は風化し簡略化し改ざんされる 元より正しい記憶など無い 最後にはおぼろげな印象のみが残り やがて消えていく 誰にとっての誰の為の記憶か この世にこの体を つなぎとめるための記憶 ひとときの音楽のように 風が通り抜けるように やがては消えていく

小鳥

川原の深い竹やぶの 中に潜む小鳥 せせらぎとともにさえずる 光が射し 風が通り抜け 光が傾く また一日の営み

渋柿

おいしそうに 色づいている柿は たいていは渋柿で 手を加えると 食べられなくも無いけれど 多くは樹上に放置されている