馴染みの場所へ

どうしても

生きている内に

行けそうにない

 

行けないことは

無いはずだが

そのためには

寿命を縮めるほどの

大変さを感じる

 

時間も

空間も

気にせず

行けたら

素敵なことだが

不吉にも

時空を超えるとは

生死を超える気がしてしまうんだ

 

自分がどうであれ

その場所は

自分とは無関係に

存在し続ける

今日も

明日も

生きる

満たされない感情

どうしようもない衝動

計算できないものは

計算できない故に

足手まといに感じ

無いものとして

切り捨てた

 

中途半端な感情も衝動も

無かったものとせず

中途半端なままで

留め置いて

取り出して

転がして

戯れる

そんなことが

できていたならば

たとえ

苦しみが増したとしても

もっと

十分に

生きていられただろう

 

距離

発した言葉は耳に届く

視線は目を射る

身振りは波動として身体に届く

手を伸ばせば触れるほどの

近さを前にしても

全てを伝えることができないならば

何もしないと同じことだと

手も足も出せず

佇み続けている

 

近づけば

近づくほど

距離はますます

遠くなる

 

スルッと

裏返って

中に入らなければ

永遠に距離は縮まらない

 まるで磁石のように遠ざかる

 

春の風景

花は咲き乱れて

若葉は樹を覆う

鳥たちは賑やかにさえずる

虫は鳴く

 

あれだけ

待ち焦がれていたはずの

春を持て余している

 

期待していたものの大きさと

期待通りにならないもどかしさ

歳を重ねて

ずっと待ち続けている

 

失くしたもの

亡くしたもの

華やかな風景と共に

過ぎ去った風景

遠い記憶を思う