nobody

何者かになりたかった

どこまで行っても

自分から抜け出せることはなく

アクセルを踏む勇気を持たず

後ずさりをする

平凡に生きることすら

難しい

これでいいのか

人生というステージに立てたのか

立てなかったのか

闘いは始まったのか

始めないまま終わったのか

途方に暮れて日が暮れる

 

輝き

一人の若い女性が

彗星のように輝き

暗闇へと消えていった

 

彼女の輝きは

人々の記憶に残る

 

遺された者たちは

短い彼女の生涯に涙する

 

別れはいつだってあるし

予期せぬ出来事もいつだってある

 

ああそれにしても

亡くしてわかる

生の輝き

もう一度会いたい

叶わぬ夢

 

ああ

本当にあなたは輝いていた

 

 

 

 

めまい

通り過ぎるまち

通り過ぎるヒト

通り過ぎる季節

 

置き去りにするのか

されるのか

 

空っぽな心に

隙間風が吹く様だ

 

手応えなく

記憶を探ってみたけれど

なんてあやふやな

輪郭を掴むことはできず

どうやって

大地に立てばいいんだと

めまいがするばかり

 

 

通り過ぎる風景

いつまでたっても

ただ通り過ぎる風景

そんなものにしかならなかった

 

なつかしい風景

ただ思い出の中にある

目指す場所はそこでもない

 

いつか辿りつけるのだろうか

目指す場所というものへ

呪い

収穫するキャベツの重み

振るう鍬の重み

積み重なった書籍の重み

 

手放す

 

手放すことにより

身体は軽やかさを取り戻す

 

重い荷物は心身に負荷をかけ

その重みにより

生を実感させるが

もはや地に縛り付けられることから

逃れたい

 

離れることにより

飛び立つことを願うが

また別の重力の呪いを

掛けられるのだろう

 

 

すっぱいブドウ

逃げてきたことはないかと考える。

肩の力が抜けて

こだわりもなくなってきたけど

まだ「 すっぱいブドウ」がありそうだ。

なにもかもできるわけではないが

( 時間もなく、金もなく)

何が「 すっぱいブドウ」

だったかは

はっきりさせたい。

だって悔しいじゃないか

滑稽じゃないか

他人からははっきりわかる

本人だけは気づいていない。

 

 

鉢植えの蜜柑

鉢植えにして何年経ったか正確にはわからない。

およそ八、九年だと思われる。

引っ越し前の家では、それなりに実っていたはず。

四年前の春、引っ越しに伴い、鉢を移動した。

その時の振動が悪かったか、環境が変わったのが良くなかったか、花が落ちてしまい実は一個もならなかった。

ここの庭自体は日当たりは悪くないのだが、自転車に場所を取られて脇に追いやられ、山茶花の木などの影にかかり、蜜柑の樹に日当たり、風通しが悪い。

そしてその翌年も次の年も実らず。

そして昨年も相変わらず実らずと思っていたら、秋になり周りの樹が葉を落としたときに、蜜柑が二個成っているのに気付いた。

風流に成ったままを鑑賞していたら、先週末に胴体が黄色い小鳥二匹が訪れ、蜜柑を食べていた。

実は転居前の家でも、成った蜜柑を小鳥に食べられていたので、こうなる運命を受け入れていたのかもしれない。

今年こそは日当たり、風通し、肥料に注意をして、是非とも収穫を目指したい。