2017-05-21 山 詩 ある時は遥かに大きなもの ある時は取るに足らぬもの ある時は存在を忘れ ある時はまた巨大に膨れ上がる いつもそこにあるだけで もう長らく形は変えていない 自分の心が変わっただけ 今日もただそこにある 風が吹き日が当たり雨が降る 何者かに見つめられている気になる
2017-05-20 渇き 詩 喉の渇きは癒せない。 いつのまにか乾いてしまったこの体。 そのことに気づかないまま 時は過ぎる。何が欲望なのか 何が不足なのか 何が過剰なのか鈍い頭のまま 濁った眼をして 外に顔を向ける。
2017-05-17 生きている限り 詩 始まりもしないのに もう終わりのことを考えている。 いつかは 永遠にいつかになり 始まりもしなかった旅は 頭のなかで無かったことになっている。 さよならを言うさびしさは もう過去のもの。 なぜなら生きている限りは つながっている。
2017-05-06 準備 詩 準備はできたか 長く白紙のまま 手付かずで そのたった一歩が踏み出せない 準備はできたか もう夕暮れ時 すべてのことは すでに終わりかけている 今更出発できるのか 準備はできたか 誰も待っていない 連れは誰もいない それでもまだ見ぬ先に 向かって歩いていけるか
2017-05-06 写真 エッセイ 多くの写真を撮ってはみたが ピンぼけ 手ブレ 期待はずれ 引き伸ばしに耐えるようなものは一枚もない カメラのせいだ レンズのせいだ とは思ってみるが この目は写った写真以上に捉えていたかは疑わしい ただ目が肥えただけだ それにしても 理想と現実の違いの大きいことだ カメラはずっと進歩しているが 脳内の感動までは実写化してくれない
2017-05-03 けやきの木 詩 ずっとそこに立っていた。 いつも側を通りすぎていた。 何度も何度も。 大きな存在なのに他のものに紛れて 少しも目に止まらず もう無くなると知らされて 迂闊にも気に留め 謝る気になる。 無かった事にしない。 一生懸命写真を撮ったがむなしい。 多くの去り行くものと同じく ただ静かに別れを告げるしか無いのか。 そしてまた 別れも告げず多くのものたちと 別れてきたことを思い知る。
2017-05-02 この体 詩 この体は速く走れないことを知っている。 この体は多くの物を持てないことを知っている。 この体は多くの限界を知っている。 頭はそれを許さずより遠くへ行こうとする。 心は悲鳴を上げる。 体を置き去りにして前に進むことはできない。 体のことを思い出せ。 体無しにはいられないんだ。
2017-05-01 三日月の夜 エッセイ 日が暮れて西の空から三日月が上って来ました。 だんだん暗くなり星の光が増して来ます。 そして飛行機が通り過ぎて行きます。 見送ったら、また次の飛行機が通り過ぎを繰り返します。 やがて星空は静かさを取り戻しました。 星の位置を確認するためじっくりと星を見渡します。 北斗七星がありました。そこは庭を横切って家の角を北に見上げるとちょうどの場所です。 この歳になって気付くとはと、いささかほろ苦いような思いがしました。