匂い

季節ごとの匂いや
人の匂いや
建物の持つ匂い
強烈に嗅ぎ分けていたのに
そんなもの無かったように
雲散霧消
本当に無くなったのは
匂いなのか
感じ取る能力なのか
あるものを
無かった事にする
能力のせいなのか
無味乾燥な
人工社会のせいなのか
死んだように
生きている

カレンダー

カレンダーの多くの余白
余白だらけでも
仕事に家事に
やることはある
録りためた番組も見なきゃ
借りた本も読まなきゃ
あの子の配信も見なきゃ
今はまだ
空白のままでいい
埋まらないままの
カレンダー
今はまだ

人生

心は乾いている
潤いを求めている
なのに
どうにもならないことと
あきらめて
あるいは
先延ばしして
考えないようにしている
あきらめてしまったら
おしまいだと
ヒリヒリした
危機感を持った日々を
思い起こしている
立ち止まって
迷って考えて
励まして
励まされて来たことこそが
人生では無かったか